西九龍の開発中エリアが水没

更新日:2019年07月30日
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西九龍文化地区水没

新施設の開発が進む「西九龍文化地区(West Kowloon Cultural District)」の埋立地で、工事現場に深さ1.5~2メートルの浸水、および直径25メートルの範囲で陥没ができていたことが分かりました。浸水部分は建設中の「演藝綜合劇場(リリック・シアター・コンプレックス)」の20%の部分に影響があり、同地区で開発中の様々な施設の土台部分にもつながっているため、安全が確認されるまでは工事が中断される恐れがあります。

浸水現場の写真からは、フォークリフトや建築資材が深く水に浸かっている様子が分かります。工事中の建物の傾きも確認されたようです。(写真は香港メディアSCMPより)

浸水は25日に発生しており、演藝綜合劇場の土台作りのために設置された「囲い堰(本来は水がある場所に囲いを建設して水のない環境で作業をおこなえるようにした構造物)」にヒビが入ったことで工事現場に浸水したことが分かっています。26日に工事業者が浸水を止め、香港政府は安全性には問題はないと説明していましたが、後に専門家や議員からは「安全だと言い切るには早すぎる」との声が上がっています。

西九龍文化地区の管理局は香港メディアSCMPの取材に対して、「25日の早朝、囲い堰内に深さ1.5~2メートルまで浸水が発生し、その影響で隣接部分に直径25メートルの浅い陥没ができた。工事請負業者のGammon社がすぐに対応をおこない26日午前9:30には浸水が止まった」と説明。香港政府の屋宇署は「浸水は木曜日の定期検査の際に発見した。構造上、安全性に問題はなかった。工事請負業者にレポート提出を求め、周辺の建物の安全をモニターするよう指示した」と話しています。

一方、タンヤ・チャン議員は「劇場の20%に影響するというのはかなり大きい。さらに、浸水が発生するのは3度目である。安全だと言い切るには早すぎる。工事を再開する前に政府は専門家を雇い調査をおこなうべきだ」と指摘しています。地盤工学者のNgai Hok-yan氏は「陥没の大きさを見ると状況は深刻。囲い堰の溶接欠陥が浸水の原因ではないか」とコメント。ベテラン土木工学者のGreg Wong Chak-yan氏は「工事チームは、囲い堰が大きな波に耐えられるような造りにできていなかった。浸水の再発を防ぐには、グラウト(建設工事で隙間などを埋めるための液体)の注入を十分におこない、波をモニターするなどが必要ではないか」と話しています。

西九龍文化地区の開発プロジェクト費用は700億香港ドル(約9,800億円)と見積もられており、「演藝綜合劇場(リリック・シアター・コンプレックス)」は2023年に完成予定で、香港および世界の踊りや演劇を楽しむことができる劇場として開発が進められています。