香港で活躍する日本人医師!難手術90件超で医療を牽引

更新日:2026年06月15日
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日本人医師

香港で海外医師として公立病院に招聘された日本人医師が、現地の医療現場で大きな注目を集めています。胸腹部大動脈手術を専門とする日本人医師の藤川拓也氏は、2018年の来港当時、香港医学界で不足していた手術技術の空白を埋めるために招かれました。当初は1〜2年だけの滞在予定でしたが、香港の優れた医療制度や豊かな大自然に魅了され、現在も限定免許(有限度註冊)の更新を重ねながら在籍8年目を迎えています。

藤川医師の軌跡と、香港に留まり続ける理由が香港メディア01の記事として紹介されていたためご案内します。

◯親友の要請でベルギー赴任をキャンセルし、香港へ
藤川医師は来港前、日本国内でもトップクラスの大動脈手術数を誇る川崎幸病院(年間約600件執刀)に勤務していました。その一線で活躍していた最中の2015年、香港で開催された学会で、新界東地区の公立病院を統括する新界東病院ネットワークの黄鴻亮(ウォン・ホンリョン)医師と知り合います。当時、香港では大動脈手術の経験や技術が不足しており、二人は手術手技について議論を交わす中で親交を深めていきました。

その後、沙田(シャティン)にある公立のプリンス・オブ・ウェールズ病院(威院)の心胸外科が深刻な人手不足に陥り、開胸・開腹による大動脈手術を行える医師が不足した際、黄医師が藤川医師に協力を要請。要請を受けた藤川医師は、予定していたベルギーの病院への赴任をキャンセルし、香港で海外医師枠の日本人医師として着任することを決意しました。

藤川医師は「一番の理由は親友の黄医師をサポートするため、そしてより多様な症例の手術に携わるためだった」と当時を振り返っています。

◯8年間で90件以上を執刀、現地医師の育成と現場改革を達成
黄医師によると、香港ではこれまで大動脈瘤などの治療にカテーテル治療を用いるのが一般的でしたが、すべての症例に最適とは言えませんでした。治療効果が高いとされる「人工血管置換術(オープン手術)」は高度な技術が必要なため、同院が創設されてからの30数年間でわずか4例ほどしか行われていませんでした。

しかし、藤川医師の着任によりこの技術が香港にもたらされ、この8年間で90件以上の手術を執刀。さらにその技術を現地の医師たちに伝承し、現在では同院の4人の医師が習得するに至っています。

また、藤川医師は仕事の進め方にも変化をもたらしました。香港では手術前に口頭で簡単に指示を出すのが一般的でしたが、藤川医師は手術プロセスを細かく分解し、自ら描いたイラストを使って手順や原理を解説する「日本式スタイル」を導入。スタッフ全員の認識を一致させるこの手法に影響を受け、黄医師も複雑な手術の前には自ら図を描くようになったといいます。

◯ワークライフバランスの充実と西貢の大自然が滞在継続の決め手に
多忙を極めることで知られる香港の医療現場ですが、藤川医師は「以前に比べてワークライフバランスがうまく取れている」と語っています。前任の日本の病院では月に1日しか休みがないほど多忙でしたが、現在は休日に郊外へ出かける時間的余裕が生まれました。

アウトドア好きの藤川医師は、美しい景色を楽しむために新界東部の西貢(サイクン)へ引っ越し、これまでに多くのハイキングコースを走破してきました。特にお気に入りは難関ルートとして知られる「鬼手岩(デビルズ・フィスト)」で、いつも一人で大自然の絶景を満喫しています。 また、香港の生活で最も文化の違いを感じた点として「街市(ウェットマーケット)」を挙げ、市場で元気に動き回る生きた鶏を初めて目撃した時は非常に驚いたと笑顔で語っています。

日本の家族と離れて暮らす寂しさについては、「香港と日本は飛行機で4〜5時間しかかからない。妻に会いたくなったら、週末を利用していつでも日本に帰ることができる」と、距離の近さも香港に留まりやすい理由であると語っています。

◯海外医師を受け入れる香港医療の現状
香港医管局(病院管理局)によると、今年5月時点で香港には360人の海外医師が在籍しており、そのうち131人が「特別登録(特別註冊)」、229人が「限定免許(有限度註冊)」となっています。 黄医師は「今後は、香港に新しい技術をもたらしてくれる海外医師の招聘に注力したい。誰もができることであれば、わざわざ海外から医師を招く必要はないからだ」と締めくくり、今後の香港医療の発展に向けた高度海外人材の重要性を強調しました。