第9章:雇用契約の解除

解雇予告または予告手当の支払による雇用契約の終了

解雇予告または予告手当を一方へ支払うことによって、雇用主または従業員から雇用契約を終了することができる。解雇予告または予告にかわる予告手当の支払は、下記の表の通りである。

表1

雇用の状態 解雇予告の期間 解雇予告にかわる予告手当の支払
試用期間中 試用期間の1ヶ月目 不要 不要
試用期間の1ヶ月を経過した後 契約により解雇予告の期間が定められている場合 7日以上の定められた期間 表2
契約により解雇予告の期間が定められていない場合 7日以上 表2
試用期間終了後または試用期間が無く、継続的に雇用(*)されている状態 契約により解雇予告の期間が定められている場合 7日以上の定められた期間 表2
契約により解雇予告の期間が定められていない場合 1ヶ月以上 表2
解雇予告の期間 解雇予告にかわる予告手当の支払

【雇用の状態】
試用期間中:試用期間の1ヶ月目

不要

【雇用の状態】
試用期間中:試用期間の1ヶ月目

不要

【雇用の状態】
試用期間中:試用期間の1ヶ月を経過した後
(契約により解雇予告の期間が定められている場合)

7日以上の定められた期間

【雇用の状態】
試用期間中:試用期間の1ヶ月を経過した後
(契約により解雇予告の期間が定められている場合)

表2

【雇用の状態】
試用期間中:試用期間の1ヶ月を経過した後
(契約により解雇予告の期間が定められていない場合)

7日以上

【雇用の状態】
試用期間中:試用期間の1ヶ月を経過した後
(契約により解雇予告の期間が定められていない場合)

表2

【試用期間終了後または試用期間が無く、継続的に雇用(*)されている状態】
契約により解雇予告の期間が定められている場合

7日以上の定められた期間

【試用期間終了後または試用期間が無く、継続的に雇用(*)されている状態】
契約により解雇予告の期間が定められている場合

表2

【試用期間終了後または試用期間が無く、継続的に雇用(*)されている状態】
契約により解雇予告の期間が定められていない場合

1ヶ月以上

【試用期間終了後または試用期間が無く、継続的に雇用(*)されている状態】
契約により解雇予告の期間が定められていない場合

表2

(*)試用期間がないまたは試用期間終了後に継続的雇用契約ではない状態ならば、事前通知の期間は合意があった期間となる。事前期間にかえて予告手当を支払う場合は、表2を参照にしてください。

表2

予告期間が日単位または週単位 解除予告日の直前12ヶ月間に従業員が得た賃金の平均日額(*) × 予告期間において通常に賃金が支払われるべき日数 予告手当の支払額
予告期間が月単位 解除予告日の直前12ヶ月間に従業員が得た賃金の平均月額(**) × 予告期間の月数 予告手当の支払額

(*) 予告期間がなく即日契約解除の場合、雇用契約解除日の直前12ヶ月間の賃金の平均日額を採用

(**)予告期間がなく即日契約解除の場合、雇用契約解除日の直前12ヶ月間の賃金の平均月額を採用

注意:平均月給の計算では、次の(i)と(ii)を除外して計算する。

(i) 一部の賃金または全部の賃金が従業員に支払われなかった期間
  • 休息日
  • 法定休日
  • 年次有給休暇
  • 傷病休暇の期間
  • 女性の産前産後休暇
  • 男性の育児休暇
  • 労働災害による休暇
  • 雇用主の同意を得た休暇
  • 雇用主から仕事を与えられなかった通常の勤務日
(ii) 当該期間に従業員に支払われた金額
  • (詳細は別紙1を参照)

解雇予告または予告手当の支払いなしの雇用契約解除

雇用主は、従業員が雇用に関して以下に該当する場合、解雇予告または予告手当の支払いなしに従業員を懲戒解雇することができる。

  1. 合法かつ合理的な命令に故意に従わない場合
  2. 不正行為を行った場合
  3. 詐欺または不誠実行為を行った場合
  4. 常習的に職務怠慢である場合

雇用主が解雇予告または予告手当の支払いなしに、ストライキに参加した従業員を解雇することは違法である。

注意:懲戒解雇は、重大な懲戒行為である。従業員が重大な不正行為を犯した場合または、雇用主が繰り返し警告した後も改善されない場合にだけ適用される。

従業員は、以下のいずれかに該当する場合、解雇予告または予告手当の支払いなしに雇用契約を解除することができる。

  1. 暴力または病気により、従業員が身体的危険にさらされるおそれがある場合
  2. 雇用主から虐待を受けた場合
  3. 従業員が5年以上雇用されていて、かつ登録医または登録中医の発行する証明書によって従事している業務に対して永久に不適であると証明された場合(第11章を参照)

雇用契約の解除に関する法的制限

雇用主は、以下の状況にある従業員を解雇してはならない。

母性保護 雇用主は妊娠が証明され、妊娠通知を提出した女性従業員を解雇してはならない。
有給傷病休暇 雇用主は有給傷病休暇を取得中の従業員を解雇してはならない。
行政機関への証拠もしくは情報提供 雇用主は、雇用条例の執行、就業中の事故または調査において、従業員が証拠もしくは情報を提供したことを理由に従業員を解雇してはならない。
労働組合活動 雇用主は、従業員が労働組合のメンバーであることまたは、労働組合活動に参加したことを理由に従業員を解雇してはならない。
就労中の怪我 雇用主は、労働者災害補償に関して従業員との合意に達する前または、関連する証明書の発行前に労働者災害で負傷した従業員を解雇してはならない。

違反と罰則

上記の状況にある労働者を解雇した雇用主は、起訴され有罪となった場合は最高で罰金10万香港ドルが科せられる。

雇用契約終了時の支払

雇用解除あるいは契約満了により従業員に支払う項目および金額は、勤続年数、雇用条件および契約解除理由などの要素によって決定される。雇用契約終了時の支払いには、通常以下の支払を含む。

  • 未払賃金
  • 予告手当(もしあれば)
  • 未取得の年次有給休暇の日数および当年度に付与される年次有給休暇の按分日数にかえた支払
  • 未払年末手当および当年度の年末手当の按分額
  • 該当する場合、長期服務金または解雇補償金
  • 慰労金や積立基金など雇用契約において約定されたその他の金額

雇用契約終了時の支払時期

解雇補償金を除き、雇用主は従業員に対してできるだけ速やかに、いかなる場合も解雇日または契約満了日から7日以内に雇用契約終了時の支払をしなければならない。
雇用主は従業員からの請求通知を受領してから2ヶ月以内に解雇補償金を支払わなければならない。

違反と罰則

雇用主が雇用契約の解除日から7日以内に従業員へ支払わない場合、従業員は雇用主に対して未払賃金に対する利息を要求することができる。
故意または正当な理由なしに支払期限までに雇用契約終了時の支払を怠った雇用主が、起訴され有罪となった場合は最高で罰金35万香港ドルおよび3年の禁固刑が科せられる。

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