第3章:賃金

賃金の定義

「賃金」とは、呼び方や計算方法に関係なく、過去の労働または未来の労働に関連して従業員へ支払われるべき全ての報酬、収入、チップ、サービス料のことを指す。各種手当(出張手当、皆勤手当、コミッション、残業手当)は、賃金に含まれる。
ただし、以下のものは賃金に含まれない。

  1. 雇用主が提供している住居、教育、食事、燃料、水、電気、医療処置の価値
  2. 雇用主が積み立てた退職基金
  3. 特に根拠なく支払われた、または雇用主の自由裁量によって支給われたコミッション、皆勤手当、皆勤ボーナス
  4. 繰り返し支払われるものではない出張手当や、交通割引の価値、雇用されていることで実際に支払った交通費に対する手当
  5. 業務の中で使った特別な経費を支払った従業員への支払いの合計額
  6. 年末手当や、好意による支払い、または雇用主の自由裁量によって支払われた毎年のボーナス
  7. 雇用契約の満了時または解除時に支払われる心づけ

次の項目が計算される際は、上記「賃金」の定義が用いられる。

  • 年末手当
  • 産前産後休暇手当
  • 育児休暇手当
  • 解雇補償金
  • 長期服務金
  • 傷病手当
  • 休日手当
  • 年次有給休暇手当

次の条件に当てはまる場合、残業手当を「賃金」に含める必要がある。

  • 残業手当の支払いが、恒常化している場合
  • 過去12ヶ月間において、平均月額残業手当が、平均月額賃金の20%以上を占めている場合

賃金控除

次の状況を除いては、雇用主は従業員から賃金を控除することを禁止している。

  1. 仕事を欠勤したことに対する控除。ただし、控除する金額は従業員が実際に欠勤した時間に比例させるべきである。
  2. 従業員の不注意あるいは怠慢によって雇用主の商品・設備あるいは財産を損壊あるいは損失させたことに対する控除。ただしいずれの場合も、控除する金額は損壊あるいは損失した価値の同等である必要があり、その金額は300香港ドルを超えてはいけない。すべての賃金控除額の合計は、賃金算定期間に従業員に支払われる賃金の4分の1を超えてはならない。
  3. 従業員に前払いや過払いしたことによる返金のために賃金控除することができる。ただし、賃金算定期間に従業員に支払われる賃金の4分の1を超えてはならない。
  4. 雇用主が従業員に提供する食事費用と住居費を控除することができる。
  5. 従業員が書面で要求する場合、雇用主は、従業員が退職制度、MPF、退職金制度、医療給付制度または貯蓄制度に拠出した金額を賃金から控除することができる。
  6. 従業員の書面による同意を得なければならないが、雇用主が従業員に貸与した金額を賃金から控除することができる。
  7. 従業員が必要書類を提出する前に、雇用主が育児休暇手当を従業員に支払ったが、従業員が育児休暇1日目から3ヶ月以内に必要書類を雇用主に提出しない場合、または必要書類を提出しないまま雇用契約が解除された場合、支払った育児休暇手当を控除することができる。
  8. 雇用主は、法律に基づいた要求または要請があれば、賃金を控除することができる。
  9. 雇用主は、裁判所が発行した所得差押令状に従って、従業員が未払いにしている維持費を控除することができる。

上記項目1〜8の項目は9の控除より、優先して控除される。
労働局所長の書面による承認がない限り、賃金算定期間において、欠勤控除と未払い維持費の控除を除いて、賃金の2分の1を超えて控除することはできない。

違反と罰則

違法に賃金を控除した雇用主が起訴されて有罪になった場合、最大10万香港ドルの罰金および最長1年間の禁固刑に処せられる。

賃金支払

賃金は、賃金算定期間の最終日の満了時に発生する。雇用主は、従業員に対して、賃金算定期間の最終日から7日以内に賃金を支払う必要がある。期限までに賃金が支払われない場合、雇用主は未払い賃金に対する利息を支払わなければならない。

違反と罰則

従業員に賃金を支払わなかった雇用主に故意があった場合や、正当な理由がない場合、もし起訴され有罪となれば雇用主は最大35万香港ドルの罰金および最長3年間の禁固刑に処せられる。

法人によって行われた賃金違反が、法人の取締役、管理職、幹部またはその他同様の役員の同意または黙認を得て、または怠慢に起因すると判明した場合、そのような者は、同様の罪として、有罪判決を受けた場合同じ刑罰を負う。

未払い賃金の利息を払わない雇用主に故意があった場合または正当な理由がない場合、起訴され有罪となれば雇用主は最大1万香港ドルの罰金に処せられる。

賃金支払不履行

雇用主が期日までに賃金を支払う能力がない場合、雇用契約の条件のもと直ちに従業員と雇用契約を解除しなければならない。

支払期日から1ヶ月以上過ぎても賃金を受け取れなかった従業員の雇用契約は雇用主によって解除されたものとみなされる。その場合、雇用主は従業員に対して、法律および雇用契約で規定された解雇賠償支払いに加えて雇用契約の解除予告手当を支払う必要がある。争いを避けるために従業員が、雇用条例に基づき権利行使する場合は雇用主にその決定を通知する必要がある。

下請業者の従業員に対する賃金支払義務

建設・建設工事業に従事する元請業者、上位下請業者および上位指定下請業者は、下請業者または指定下請業者に雇用されている従業員の最初の2ヶ月分の未払賃金に対して責任を負う。

下請業者または指定下請業者に雇用されている従業員の追加期間が、期日までに賃金を受け取らなかった場合、60日以内(または、労働局所長が追加期間を許可した場合は90日の追加期間以内)に、従業員は元請業者または主要な指定下請業者に対して書面によって通知しなければならない。この場合、従業員が出す通知書の中には、次の事項を記載しなければならない。

  1. 従業員の氏名および住所
  2. 雇用主の名称および住所
  3. 従業員の雇用場所の住所
  4. 未払賃金の対象となる仕事の詳細
  5. 未払賃金の金額とその算定期間

元請業者、上位下請業者および上位指定下請業者は、通知を受けてから30日以内に従業員に対して給与を支払う必要がある。これらの業者はすべての上位下請業者および上位指定下請業者に対して従業員への支払責任を分担するよう要求することができる。

元請業者、上位下請業者および上位指定下請業者が支払った賃金は、従業員の雇用主が支払うべき債務である。この債権を回収する場合は、民事訴訟手続きによる。

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