第13章:労資審裁所または少額賃金請求仲裁所の命令より裁定された金額を支払わなかった場合の雇用主の刑事責任

雇用主は労資審裁所あるいは少額賃金請求仲裁所により下された判決に従い、裁定金額を遅滞なく支払わなければならない。

判決命令により裁定された金額の支払不履行は刑事犯罪となる

2010年に改定された雇用条例(Note1)のもとで、もし裁判所の判決(Note2)が雇用主による特定の権利(賃金、年末手当、産前産後休暇手当、解雇補償金など、「特定の権利」については下記を参照下さい)(Note3)の支払を求めており、雇用主が意図的にかつ正当な理由なく支払期日の後から14日以内(Note4)に支払われなければ、その雇用主が起訴され、有罪となった場合は最高で罰金35万香港ドルおよび3年の禁固刑が科せられる。

判決命令の裁定金額のいかなる部分の不履行に対しても適応される。また分割で支払う場合、いかなる分割の支払不履行あるいはある分割の一部支払不履行に対しても適応される。

会社の取締役および責任者は裁定金額の支払不履行に対して刑事責任を負う

会社が故意または正当な理由なく裁定金額の支払期日より14日以内に該当する金額を支払わない場合で、該当する会社の取締役あるいは責任者の同意または黙認・怠慢により行われたと証明された場合、該当する取締役あるいは責任者は違法として有罪となった場合、最高35万香港ドルの罰金および3年の禁固刑に処せられる。

「特定の権利」の範囲

「特定の権利」とは、雇用条例のもとで刑事制裁によって保障された賃金および法定権利も含む。例えば以下のようなものを含む。

  • 賃金
  • 年末手当
  • 産前産後手当
  • 父親の育児休暇手当
  • 解雇補償金
  • 長期服務金
  • 傷病手当
  • 法定休日の手当
  • 年次有給休暇手当
  • 雇用契約終了時の支払
  • 雇用条例の「雇用の保護」のパートに関連する不当解雇の裁定

(Note1)

2010年の雇用条例改定は、効力の発生日(2010年10月29日)以降に下された労資審裁所または少額賃金請求仲裁所の判決に適用される。

(Note2)

「裁判所の判決」とは、判決、命令、裁定、雇用条例のもとで労資審裁所により行われた判決、または少額賃金請求仲裁所条例のもとでの少額賃金請求仲裁所により行われた判決の結果として扱われる支払を含む。

(Note3)

もし「裁判所の判決」が裁定金の支払を求めたが、特定の権利を含むか否かについて言及されていない場合、およびその判決に関連する全部あるいはその一部の賠償請求が特定の権利からなる場合、反対の証拠がない限りその判決は特定の権利に関する支払をすることを定めているとみなされる。

(Note4)

「裁判所の判決」によって決定された金額の支払日が特定されていない場合、判決が出た日から14日以内に決められた金額を支払わなければならない。

参考例

(裁定金額の支払期日後14日以内の期間の見極め方)

【例1】裁定金額を一括で支払う場合:

雇用主が雇用契約で約定した1ヶ月間の予告期間にかえて1ヶ月分の解除予告手当7500香港ドルを支払うことにより従業員を解雇することを承諾したが、その後、雇用主が当該解除予告手当の支払を拒絶したと仮定する。

従業員は労働局労使関係科の調停をへて、雇用主に解除予告手当7500香港ドルを請求するが、雇用主との争議は解決に至らなかった。従業員は少額賃金請求仲裁所に訴えを起こし、雇用主に該当する解除予告手当の金額を支払うよう請求し、2010年11月8日に裁定を得た。仲裁所は、裁定で雇用主は2010年11月15日以前に従業員に解除予告手当7500香港ドルを支払うよう命じた。

2010年11月

(*)裁定金額の支払期日

支払期日裁定金額の支払期日より14日以内(すなわち2010年11月26日から29日)の期間に、雇用主が故意にかつ正当な理由無く支払わないあるいは支払を遅滞することは違法である。

雇用主が故意にかつ正当な理由なく裁定金額の支払期日(すなわち2010年11月15日)より14日以内(すなわち2010年11月16日から29日)に該当する金額7500香港ドルを支払わないことは違法であり、有罪となった場合最高35万香港ドルの罰金および3年の拘禁刑に処せられる。

【例2】裁定金額を分割で支払う場合:

従業員が労資審裁所に訴え、雇用主にコミッション12000香港ドルの支払を請求する。2010年11月3日の聴聞で和解協議に合意し、雇用主は3分割で関連金額を従業員に支払うことで労使争議は円満に解決した。労資審裁所は、同日に和解協議を承認し、裁定金額を下記の期日以前に支払うよう裁定により命じた。

分割回数 期日 金額
第一回目 2010年11月17日 4000香港ドル
第二回目 2010年12月17日 4000香港ドル
第三回目 2011年1月17日 4000香港ドル

雇用主は第一回目および第二回目の合計8000香港ドルを期日通りに支払ったとしても、第三回目の4000香港ドルを2011年1月31日(すなわち第三回の裁定金額の支払期日より14日以内となる最終期限)以前に支払われない場合違法として起訴される。

2011年1月

(*)第三回目の裁定金額の支払期日

支払期日第三回目の裁定金額の支払期日より14日以内(すなわち2011年1月18日から31日)の期間に、雇用主が故意にかつ正当な理由無く支払わないあるいは支払を遅滞することは違法である。

雇用主が故意にかつ正当な理由なく第三回目の裁定金額の支払期日(すなわち2011年1月17日)より14日以内(すなわち2011年1月18日から31日)に4000香港ドルを支払わないことは違法であり、有罪となった場合最高35万香港ドルの罰金および3年の拘禁刑に処せられる。

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