第10章:雇用の保護

雇用条例において、本章は雇用主が従業員の解雇や雇用契約の条件変更により雇用条例の規定を免れようとすることを防止することを目的としている。

雇用の保護に対する要件および救済

従業員は、以下の状況において雇用主に対して救済を要求することができる。

状況 条件 救済
不当解雇
  1. 従業員が継続的契約にもとづいて24ヶ月以上の期間雇用されている場合。かつ
  2. 雇用条例に規定された正当な理由以外で従業員が解雇された場合。
  • 復職または再雇用命令または
  • 雇用契約終了時の支払の裁定
雇用条件の不当な変更
  1. 従業員が継続的契約にもとづき雇用されいている場合。かつ
  2. 雇用条件が、従業員の同意なしに変更された場合
  3. 雇用契約にそのような変更を認める旨の明確な条件が含まれていない場合。かつ
  4. 雇用条例に規定された正当な理由以外の理由で、雇用条件が変更された場合。
不当かつ非合法な解雇
  1. 従業員が雇用条例に規定された正当な理由以外の理由で解雇された場合。かつ
  2. 解雇が法律に違反する場合(「第9章 雇用契約の解除に関する法的制限」を参照)
  • 復職または再雇用命令あるいは
  • 雇用契約終了時の支払の裁定、かつ/あるいは
  • 最高15万香港ドルの補償金の裁定

解雇または雇用条件の変更に対する有効な理由

解雇または雇用条件の変更に対する5つの有効な理由は以下のとおりである。

  • 従業員の行動
  • 業務遂行に対する従業員の能力または資質
  • 余剰人員の削除またはその他の業務遂行に起因する理由
  • 法的要求(例えば、従業員が雇用契約時の職位で勤務を継続することや雇用契約時の条件で継続することが法律に反する場合)
  • その他の実質的な理由

雇用の保護に関する救済請求

救済を請求する従業員は、解雇または雇用条件の変更があった日から3ヶ月以内に書面での通知を雇用主に提出しなければならない。労働局所長が許可する場合、この期間はさらに6ヶ月を限度として延長されることがある。従業員が労資審裁所に請求を申し立てようとする場合、雇用契約の解除日または雇用条件の変更日から9ヶ月以内に申し立てなければならない。

雇用の保護に関する救済

雇用の保護に関する救済は、復職、再雇用または雇用契約終了時の支払の裁定を含む労資審裁所で決定する。

復職または再雇用の命令について

復職命令とは、従業員を解雇しなかったものとして扱うことまたは従業員の雇用条件を変更しなかったものとして扱うことを雇用主に要求する命令のことである。

再雇用命令とは、雇用契約時の条件と同じ条件または、その他の適切な雇用形態で従業員を再雇用しなければならないという命令のことである。従業員による申請がおこなわれ関係者の同意があれば、雇用主の後継者または関連会社による雇用が雇用主による再雇用として扱われるよう労資審裁所は命令を変更できる。

不合理な解雇および雇用条件の変更があった際、復職命令または再雇用命令は、雇用主と従業員が合意した場合にのみ命じられる。

不合理で違法な解雇の場合は、労資審裁所が命令が適切であり合理的に実現可能であるとみなした場合は、雇用主側の同意がなくても復職命令または再雇用命令ができる(*1)。

注意:雇用主が復職または再雇用の命令に従わなかった場合、雇用主は労資審裁所の命令により支払うべき金銭的救済に加え、従業員の平均月給の3倍の金額(計算方法の詳細は別紙1を参照、上限72,500香港ドル)を追加で従業員に支払わなければならない。

従業員が、復職または再雇用を命じられた場合、従業員の勤務歴および年金の権利などの特権は、復活させなければならない。また、雇用期間の継続性も中断されていないものとして扱わなければならない。

労資審裁所は、雇用条例のもとで従業員が解雇されなかった場合、または雇用条件が変更されなかった場合に得られたであろう未払金および法的権利を従業員に付与することを雇用主に命じることがある。反対に、解雇または雇用条件の変更のために雇用主が従業員に支払った金額に関しては雇用主に返還するよう従業員に命じることがある。

(*1)2018年10月19日までに従業員が不合理で違法に解雇された場合は、復職命令または再雇用命令は雇用主と従業員が合意した場合にのみ命じられる。

雇用契約終了時の支払いの付与

復職または再雇用されなかった場合、労資審裁所は、雇用主が従業員に対して支払うべき公平および適切な雇用契約終了時の支払金額を裁定する。

雇用契約終了時の支払とは、以下の3つを意味する。

  1. 解雇されたことによって受領権利があるがまだ支払われていない雇用条例に基づく法的権利
  2. 従業員の雇用が継続していた場合、雇用条例のもとで享受できたと合理的に推測できた権利
  3. 雇用契約のもとで従業員に支払われるべきその他の支払
従業員は、たとえ勤続年数が雇用契約終了時の支払のために必要な勤続年数に達していない場合であっても、雇用契約終了時の支払が行われる場合がある。そのような場合、雇用契約終了時の支払は、実際の勤務年数に従って計算されなければならない。

補償の裁定

従業員が非合法的および違法に解雇された場合かつ、労資審裁所が復職または再雇用を命じなかった場合、雇用主は従業員に対して15万香港ドルまでを限度として補償金を支払うことができる。

補償金の決定において、労資審裁所は以下を含む状況を考慮する。

  1. 雇用主および従業員の状況
  2. 従業員の雇用期間
  3. どのように解雇が行われたか
  4. 解雇の結果として、従業員が被った損失
  5. 従業員が新しい職を得られる可能性
  6. 解雇の理由に従業員の過失があるか
  7. 雇用契約終了時の支払を含む解雇に関連して従業員に受給権がある全ての支払

例外

性別、障害、家族状況または人種によって解雇された場合の請求には、雇用条例の本章は適用されない。従業員が、性別、障害、家族状況または人種によって解雇された場合、以下の法律に基づく救済を請求することができる。

  • 性差別条例
  • 障害者差別条例
  • 家族状況差別条例
  • 人種差別条例

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