別紙1:12ヶ月の平均賃金による関連法定権利の計算手引きと計算例

序論

【2007年雇用(改定)条例】の法定権利の計算方法に関する条文は2007年7月13日に施行された(*1)

【2007年雇用(改定)条例】の主要な目的は、雇用条例で規定されている賃金(*2)の全ての構成要素(コミッションおよび手当などを含む)が関連法定権利を計算する際に含まれるようにすることである。

【2007年雇用(改定)条例】施行後、従業員が月給・日給あるいは出来高払いなどいかなる賃金体系であっても、関連法定権利の計算は12ヶ月間の平均賃金をもって計算しなければならず、平均賃金の計算時には「除外すべき」期間と賃金を除かなければならない。

(*1)【2007年雇用(改定)条例】の適用:

→2007年7月13日以降に締結された雇用契約に適用される

→雇用契約が施行日より前に有効となっている場合、【2007年雇用(改定)条例】は下記の状況において適用される。

  • 雇用主が某賃金算定期間に従業員に産前産後休暇手当、育児休暇手当、傷病手当、休日手当あるいは年次有給休暇手当を支払わなければならず、該当する賃金算定期間の最終日が施行日の当日以降である場合。
  • 雇用主が従業員の年末手当(あるいは年末手当の一部)を支払わなければならず、施行日の当日以降に算定期間満了し支払う場合。
  • 契約解除時に関連する法定権利を支払わなければならず、契約解除日が施行日の当日以降である場合。

(*2)賃金の範囲に関する事項は第3章「賃金定義」を参照

(I) 関連法定権利の項目
  1. 休日手当
  2. 年次有給休暇手当
  3. 傷病手当および関連条文
  4. 産前産後休暇手当および関連条文
  5. 育児休暇手当
  6. 年末手当
  7. 解除予告手当
(II) 関連法定権利項目の計算基礎
  • 12ヶ月間の平均賃金による関連法定権利の計算

    →【2007年雇用(改定)条例】で規定された特定日直前の12ヶ月間(*5)に従業員が得た平均日給(あるいは月給)を、関連法定権利の計算基礎としなければならない。もし、従業員の雇用期間が12ヶ月に満たない場合、その短い雇用期間で計算する(*6)。

    →関連法定権利の特定日は下記の通りである:

    法定権利 休暇日数 特定日
    休日手当 1日 法定休日の当日
    連続1日以上 法定休日の初日
    年次有給休暇手当 1日 年次有給休暇の当日
    連続1日以上 年次有給休暇の初日
    契約解除により未取得の日数 契約解除日
    傷病手当(*7) 1日 傷病日の当日
    連続1日以上 傷病日の初日
    産前産後休暇手当(*8) 連続1日以上 産前産後休暇の初日
    育児休暇手当 1日 育児休暇の当日
    連続1日以上 育児休暇の初日
    年末手当(*9) 支払期日
    解除予告手当 契約解除を予告した日(事前に予告を行わない場合、契約解除日)

(*3)雇用主が傷病日を取得中の従業員を不当に解雇した場合の賠償金額を含む

(*4)雇用主が妊娠した従業員を不当に解雇した場合の賠償金額を含む

(*5)「月」とは「暦月」を指す

(*6)従業員が2007年7月5日に入社したと仮定すると、2008年4月4日(すなわち清明節)直前の雇用期間が12暦月に満たないため、該当する従業員の2008年4月4日の休日手当は2007年7月5日から2008年3月31日の期間内に得た平均日給に相当する額とする。

(*7)従業員が傷病日を取得中に不当に雇用契約を解除され、雇用主が7日分の賃金に相当する賠償金を計算しなければならない場合、「契約解除日」を「特定日」とする。

(*8)従業員が妊娠している期間に不当に雇用契約を解除され、雇用主が1ヶ月分の賃金に相当する賠償金を計算しなければならない場合、「契約解除日」を「特定日」とする。

(*9)契約に年末手当の金額を指定していない状況に適用する。

例1:休日手当の特定日および12ヶ月の期間の決定方法—「中秋節の翌日」の例

  • 特定日とは法定休日の当日、すなわち2007年9月26日を指す
  • 12ヶ月間の平均賃金は、2006年9月1日から2007年8月31日に得た賃金で計算する。
中秋節の翌日の例

例2:産前産後休暇の特定日および12ヶ月の期間の決定方法—2007年10月18日を起算日として10週間の産前産後休暇を取得する場合の例

  • 特定日とは産前産後休暇の初日、すなわち2007年10月18日を指す
  • 12ヶ月間の平均賃金は2006年10月1日から2007年9月30日に得た賃金で計算する。
産前産後休暇を取得する場合の例

除外すべき期間および賃金

→平均賃金が下がり、法定権利が減少することを回避するため12ヶ月間の平均日給(あるいは月給)を計算する場合、【2007年雇用(改定)条例】で規定されている下記の賃金を支払われなかった、あるいは賃金の全額を支払わなかった状況を特定し、該当する期間と同時に該当する期間に従業員が得た賃金を除外しなければならない。(*10)

(i) 従業員が取得した下記のいかなる休暇
  • 雇用条例で規定されている休暇(すなわち休息日・法定休日・年次有給休暇・産前産後休暇・育児休暇あるいは傷病日)
  • 従業員災害補償条例で規定されている労災休業あるいは
  • 雇用主の同意のもと取得した休暇
(ii) 従業員が正常な勤務日に雇用主から業務を与えられなかった日。

例3:「除外すべき」期間と賃金の除外方法—2007年11月20日より7日間の年次有給休暇を取得する場合の例

  • 従業員は月給制で、2007年8月8日から10週間の産前産後休暇を取得し、産前産後休暇手当は賃金の5分の4であると仮定する。
  • 過去12ヶ月間(すなわち2006年11月1日から2007年10月31日)の平均日給をもとに7日間の年次有給休暇手当を計算する。
  • 平均日給を計算する際に、除外すべき期間と賃金とは:

    →過去12ヶ月間における10週間の産前産後休暇の期間(すなわち365日から70日)を控除

    →過去12ヶ月間における賃金総額から10週間の産前産後休暇手当を控除

(*10)平均賃金の計算および事務作業の簡素化のため、【2007年雇用(改定)条例】では(i)(ii)の期間に支払われた金額は賃金と推定されるよう技術的な改定が行われた。これにより、雇用主が平均賃金を計算する際、従業員が全部支給された休暇(法定休日・年次有給休暇・産前産後休暇・育児休暇あるいは雇用主の同意を得て取得したその他の休暇など)を取得した場合、その期間およびその期間に得た金額は除外する必要はない。なお【雇用条例】で規定されている賃金の定義はこの改定によって変更されていないことには注意すべきである。

平均日給

=12ヶ月間の賃金総額-10週間の産前産後休暇手当(香港ドル)/365-70(日)

計算例

(注意:下記の仮想例は関連法定権利をどのように計算するかを説明するために用いるものである)

例1:2008年1月1日の休日手当の計算

仮定

  • 報酬:日給300香港ドル、休息日は無給
  • 2007年に得た12ヶ月間の賃金は92700香港ドルで下記を含む

    →労働日301日間(すなわち365日-52日の休息日-12日の法定休日)に得た賃金90300香港ドル

    →8日間の法定休日に対する休日手当2400香港ドル

  • 2007年の賃金が全額支払われなかった休暇は:

    →52日間の無給の休息日

    →4日間の無給の法定休日(雇用期間の最初の3ヶ月間にある法定休日)

除外すべき期間および賃金

  • 52日間の無給の休息日
  • 4日間の無給の法定休日
    (注:上記56日は無給休暇であるため、除外すべき金額は0となる)

12ヶ月間の平均金額に基づく休日手当

  • 2007年に得た賃金の平均日給:
    92700-0(香港ドル)/365-52-4(日)=300香港ドル
  • 2008年1月1日の休日手当:300香港ドル

例2:4日間の傷病日に対する傷病手当の計算

仮定

  • 報酬:月給10000香港ドル、休息日は有給
  • 傷病日初日の直前12ヶ月間に得た賃金:120000香港ドル、勤務により得た賃金および休暇に対する金額を含む
  • 12ヶ月間に取得した休暇:71日間の全額賃金が支払われている休暇には下記を含む

    →52日間の休息日

    →12日間の法定休日

    →7日間の年次有給休暇

除外すべき期間および賃金

  • 従業員が12ヶ月間において全額賃金が支払われていない休暇を取得しなかったため、除外すべき期間および賃金は0となる。

12ヶ月間の平均金額に基づく傷病手当

  • 当該12ヶ月間に得た賃金の平均日給:
    120000-0(香港ドル)/365-0(日)=329香港ドル
  • 4日間の傷病手当:329香港ドル×4/5×4=1053香港ドル

例3:7日間の年次有給休暇手当の計算

仮定

  • 報酬:月給9000香港ドル、休息日は有給
  • 年次有給休暇初日の直前12ヶ月間に得た賃金:108000香港ドル、業務により得た賃金および休暇に対する金額を含む
  • 12ヶ月間に取得した休暇:71日間の全額賃金が支払われている休暇には下記を含む

    →52日間の休息日

    →12日間の法定休日

    →7日間の年次有給休暇

除外すべき期間および賃金

  • 従業員が12ヶ月間において全額賃金が支払われていない休暇を取得しなかったため、除外すべき期間および賃金は0となる。

12ヶ月間の平均金額に基づく年次有給休暇手当

  • 当該12ヶ月間に得た賃金の平均日給:
    108000-0(香港ドル)/365-0(日)=296香港ドル
  • 7日間の年次有給休暇手当:296香港ドル×7=2072香港ドル

例4:1ヶ月分の解除予告手当の計算

仮定

  • 報酬の構成

    →基本月給6000香港ドル

    →月ごとにスライド制により計算される契約上のコミッション

  • 雇用契約解除の予告日の直前12ヶ月間に得た賃金:600000香港ドル、基本給およびコミッションを含む
  • 12ヶ月間に賃金が全額支払われなかった休暇:賃金半額(すなわち基本給の50%)による15日間の研修休暇で合計1500香港ドル

除外すべき期間および賃金

  • 賃金半額による15日間の研修休暇および1500香港ドル

12ヶ月間の平均金額に基づく年次有給休暇手当

  • 当該12ヶ月間に得た賃金の平均月給:

    (a) 計算する月給—
    365-15(日)/365(日)×12=11.5ヶ月

    (b) 平均月給—
    600000-1500(香港ドル)/11.5(ヶ月)=52043香港ドル

  • 1ヶ月分の解除予告手当:52043香港ドル

香港の雇用条例のガイドブックの内容を含む、人事労務管理のことなら当社にお任せください。人事労務管理の経験豊富な日本人スタッフが香港の法律に基づき丁寧にサポートします。給与計算やMPF(強制積立年金)の手続きなどにも対応しています。

お電話でのお問合せ
(+852)2529-8288
受付:9:00〜18:00/月〜金(祝日は除く)
メールでのお問合せ FAQ人事労務管理の良くある質問