2019年施政報告と市民の反応

更新日:2019年10月17日
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施政報告2019

香港政府は昨日、香港の将来的な計画や目標を示す「2019年 施政報告」を発表しました。香港市民745名を対象としたアンケート調査では、65%が「不満・非常に不満」、17%が「満足・非常に満足」と回答したことを香港民意研究計画が発表しています。

香港に居住する多くの日本人に注目される内容は殆どみられませんでしたが、香港の将来を示す重要な方針のため以下に簡単にご案内します。施政報告の詳細はページ下部のリンクからご確認いただけます。

【住宅】

・初めて住宅を買う市民への支援策として、住宅ローンを組んで購入できる物件価格の上限を400万香港ドル(5,560万円)から800万香港ドル(1億1,120万円)へ引き上げ予定。住宅ローンは、政府系公的融資機関(香港按證保険有限公司)にて物件価格の90%を上限として借り入れることが可能。

【福祉】

・幼稚園、小学校及び中学校(日本の中学校と高校に相当)の児童へ年2,500香港ドル(34,750円)の学習手当の支給を予定。(約90万人の学生が対象予定)

【医療】

・学校でのワクチン接種プログラムの適用対象を幼稚園や保育所までに拡大予定。また妊婦への百日咳ワクチンの接種も対象に。

【交通運輸】

・公共交通機関(MTR、バス、フェリー等)の交通費に対して補助手当を拡大。交通費を毎月400香港ドル以上利用した場合、超過額の1/4を支給していたが、1/3に引き上げ。また、1ヶ月当たりの補助手当の上限を300香港ドル(4,170円)から400香港香港ドル(5,560円)へ引き上げる予定。

・将来開業予定の「屯門(テュンムン)-赤鱲角(チェクラプコク)」と「将軍澳(チョンクワンオウ)-藍田(ラムティン)」を結ぶトンネル通行料を免除する予定。

・MTR東涌線の延伸、屯門南の延伸、北環線の計画について早期着工を予定。

【土地の供給】

・「收回土地條例(土地回収条例)」に従い、新界(ニューテリトリー)などにある発展が見込める遊休地、香港各エリアでまだ開発計画がのない私有地などを取得し、政府系マンション建設などを開発予定。

・ランタオ島東部に予定している人工島「明日大嶼願景」の計画は、市民の住宅需要に対応するために開発の継続を予定。環境保全などに対して専門家や若者が意見を言えるよう市民プラットフォームを設置。

【環境】

・電気自動車の充電施設を一般住宅の駐車場へ普及させるため、20億香港ドル(278億円)を投資予定。

2019年の施政報告の詳細は以下より確認いただけます。

https://www.policyaddress.gov.hk/2019/eng/highlights.html

なお、香港メディアの各反応は以下の通りです。

メディア「香港01」では「これは政策ではなくバラマキだ」と非難。学習手当2,500香港ドルについて「目的が明確ではない。市民の怒りを収める目的ならば効果はないだろう」などを指摘。

メディア「on.cc」では経済専門家の話を取り上げており、住宅政策について「不動産購入を促す政策は市民の負担を重くする。今後の住宅価格は3%程度下落するだろう。デモが続けば来年10%程度下がる恐れがある」と伝えました。

香港メディア全体でも不動産購入について「多くのローンが組めても返済年数(一般的に30年)が変わらないため、1か月あたりの返済額が増えるだけ」と報じています。