2025年5月1日に退職金のMPF相殺制度が新制度へ

更新日:2025年04月28日
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退職金

香港では、従業員の退職時に雇用主が支払う退職金(解雇補償金・長期服務金)を、年金制度「MPF(強制積立年金制度)」の積み立て分から差し引くこと(相殺)が可能でした。このMPF相殺制度が廃止となり、新制度が2025年5月1日に施行されます。

2025年5月1日を「移行日」として、香港政府は雇用主が円滑に新制度へ移行できるよう、雇用主に対する25年間の補助金制度を講じますが、雇用主は将来の雇用や解雇において慎重にならざるを得ない状況に変わりつつあります。補助金は、移行日以降の期間分の退職金を対象とし、移行日以降の1~3年目は50%(上限3,000香港ドル)を支給、その後25年間にわたり段階的に減額され26年目には補助金が終了します。

MPFとは、MPFはMandatory Provident Fund(強制積立金)の略称であり、2000年より導入された年金制度です。雇用主と従業員がそれぞれ給与の5%(上限1,500香港ドル)を拠出し、従業員の退職後の生活資金を積み立てる制度です。このうち、雇用主が拠出した部分(雇用主負担分)は、これまで退職金(解雇補償金・長期服務金)の支払いに充当することが認められていました。この充当(相殺)手続きは義務ではありませんでしたが、大半の雇用主は利用しており、この制度が変わることで雇用主の負担が増えることが明らかとなっていました。

今回の移行日以降、制度が変わることで理解すべきポイントは3つ
・2025年5月1日より前に拠出した積み立て分は相殺が可能(雇用条例に基づく基準あり)
・2025年5月1日以降の拠出する積み立て分からは相殺はできない
・2025年5月1日から、雇用主に対する補助金制度が25年間おこなわれること
上記が主に理解すべき点です。

従業員の退職金の算定方法「月間給与(上限22,500香港ドル) × 3分の2 × 勤続年数」や、退職金の上限額が39万香港ドルであることなどについては、今のところ変更はありません。また、雇用条例の退職金(解雇補償金・長期服務金)の規定については現時点では変更がないため、MPF積み立て分から充当(相殺)が可能かどうかを判定する基準も変わらず適用されます(例:自己都合退職の場合は相殺対象外など) 。

香港BSでは、このような給与計算業務や労務コンサルテーション(従業員の解雇や退職に関するアドバイザリー業務)もおこなっておりますので、お気軽にお問い合わせください。

◆香港労工処(香港労働局)MPF相殺制度に関する詳細ページ
https://www.op.labour.gov.hk/en/index.html

◆MPF相殺制度廃止後の退職金(SP)・永年勤続手当(LSP)の金額、政府補助金の計算方法が簡易計算できるページ
https://www.op.labour.gov.hk/en/calculator.html