香港の無形文化遺産代表リスト24項目(2024年度版)

更新日:2024年12月10日
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麒麟

香港政府のレジャー文化サービス局は、香港の無形文化遺産の中でも特に重要である「無形文化遺産代表リスト」に4項目を追加しました。現時点で香港の無形文化遺産代表リストは24項目となっており、2024年度の最新版としてご覧ください。

香港の無形文化遺産とは、「口承による伝統および表現(無形文化遺産の伝達手段としての言語を含む)」、「芸能」、「社会的慣習、儀式および祭礼行事」、「自然および万物に関する知識や慣習」、「伝統工芸技術」の5つの分野で価値があると認められているものを指しています。これまでに507項目の無形文化遺産が発表されており、その中でも特に文化的価値が高く緊急に保存が必要な項目が「無形文化遺産代表リスト」となります。

【芸能】
1. 粤劇(広東オペラ)
広東オペラは、中国の伝統的な演劇の一種で、歌とセリフは広東語で行われる。広東語圏、主に広東省、広西チワン族自治区、香港、マカオでよく見られる。

2. 西貢坑口客家舞麒麟(西貢坑口の客家による麒麟の舞)
中国神話に現れる伝説上の動物である麒麟は邪気を払い幸運をもたらす縁起の良い動物だと信じられており、春節、結婚式、誕生日パーティー、新居への引っ越し、来客の歓迎、太平清醮、神様の誕生日など、あらゆるお祝いの場で麒麟の舞が行われる。新界エリアに住む漢民族の一派である客家(はっか)人により200年以上も続いている。

3. 全真道堂科儀音樂(全真教の道教儀式音楽)
香港の道教の一派である全真教の伝統的な儀式で披露される音楽。粉嶺にある蓬瀛仙館が受け継いだ音楽が典型的な代表例。香港で長年にわたり発展し、広東オペラ、儒教や仏教などの宗教音楽の影響を受けている。

4. 南音(広東民謡の一つ)
広東語で語り口調で歌う芸術で、20世紀初頭の香港で人気の娯楽だった。楽器演奏に合わせて盲目の芸術家が主に歌い、歌詞には社会の最下層の生活苦が反映されていることが多くあった。現在では広東オペラの一部として組み込まれている。

【社会的慣習、儀式および祭礼行事】
5. 長洲太平清醮(長州太平祭り)
長州島で開催される長洲饅頭祭りとも呼ばれる伝統的なお祭りで、飄色(ピウセッ)パレードや饅頭タワー登り(饅頭取りレース)などの行事がおこなわれ、海外からも多くの観光客が訪れる。
日程:旧暦の4月8日(毎年5月頃)
ホームページ:https://www.cheung-chau.com/bun-festival

6. 大澳端午龍舟遊涌(大澳ドラゴンボート水上パレード)
100年以上続く宗教行事で、端午節に漁業協会のメンバーが手漕ぎのドラゴンボートで大澳の4つの廟宇を訪れる。
日程:旧暦の5月5日(毎年6月頃)

7. 香港潮人盂蘭勝會(香港潮州人お盆祭り)
香港の潮州出身者が主催する「盂蘭勝會」という100年以上続く祭り。祖先崇拝や冥界をさまよう幽霊のために儀式を行う。
日程:旧暦7月初旬から末までの1か月間

8. 中秋節大坑舞火龍(大坑のファイヤー・ドラゴン・ダンス)
大坑(タイハン)地区で行われる140年以上の歴史がある伝統行事。300人以上のパフォーマーが、約12,000本の線香で飾られた全長67メートルの龍と共にパレードを行う。
日程:旧暦8月14日、15日、16日の夜(毎年9月頃)
ホームページ:https://www.discoverhongkong.com/eng/explore/culture/tai-hang-s-fire-dragon-dance.html

9. 黃大仙信俗(黄大仙の信仰)
黄大仙(ウォンタイシン)は1915年に寺院が創建された、道教、仏教、儒教の3つの宗教が習合した寺院であり、あらゆる願いが叶えられる場所として参拝者が集まる。信仰の起源は浙江金華地区にあり明朝から清朝の頃に中国南部に伝わったとのこと。
住所:2 Chuk Yuen Road, Wong Tai Sin, Wong Tai Sin District, New Kowloon, Hong Kong

10. 宗族春秋二祭(宗族の春秋節)
宗族が祠堂で祖先を崇拝したり山にある祖先の墓地を訪れる慣習。
日程:春分や秋分の日、旧暦2月、4月、9月

11. 香港天后誕(天后の生誕祭)
海と漁師の女神である天后を祀る天后廟は香港の様々な地区にあり、縁起の良い神様が集まるとされている。天后の誕生日を祝うために様々な地区で広東オペラパフォーマンスやパレードなどが行われる。
日時:旧暦の3月23日、またはその他の指定日

12. 中秋節薄扶林舞火龍(薄扶林のファイヤー・ドラゴン・ダンス)
香港島西部の薄扶林(ポクフーラム)で行われるファイヤー・ドラゴン・ダンスで、数十人が街を練り歩く。
日時:旧暦の8月15日(毎年9月頃)

13. 正一道教儀式傳統(正一教の道教儀式や伝統)
正一教(しょういつきょう)は、道教の宗派の一つで、現在の道教の教派は全真教と正一教の二つに大別されて考えられている。香港での正一教の主な儀式に、太平清醮、安神、祠堂の開光儀式、廟宇の重修儀式と開光儀式、躉符などが含まれる。

14. 食盆(囲村の伝統料理)
新界エリアにある囲村では祖先崇拝、打醮、結婚式、男児誕生の点燈儀式、祠堂の開光などの際にテーブルを囲い、盆に盛り付けた料理を食べる伝統があり、何世紀にもわたる食文化となっている。

15. 點燈(点灯儀式)
男児が誕生した際、一族が旧暦の1月に灯籠を灯す儀式を行い、先祖や神々や家族に息子が生まれたことを知らせる。儀式の完了後、一族の男たちが宴会を開き、酒と粥が振る舞われた後、男児が一族の新メンバーとして加わったことを正式に見届ける。

16. 大埔端午遊夜龍(大埔のドラゴンボートパレード)
端午節の期間、香港の様々な地区でドラゴンボートレースが開催されるが、大埔(タイポー)の歴史ある漁村の三門仔では旧暦5月4日の晚上と5日の夜明けにドラゴンボートパレードを開催する。神々の祝福とコミュニティの陸と海での安全を祈るために行われる。
日時:旧暦の5月4日(毎年6月頃)

17. 盂蘭勝會(お盆行事)
盂蘭勝會は香港の様々な地区の様々な民族コミュニティによって行われている儀式で、主に「潮州の伝統」、「海陸豐/鶴佬の伝統」、「水上人の伝統」、「本地の伝統」に分けられる。19世紀半ばに始まり、先祖を崇拝し、衣服や食べ物で幽霊を鎮め、神に感謝を示すことが儀式に含まれ、様々なグループの人々を結びつける役割も果たしている。

【自然および万物に関する知識や慣習】
18. 涼茶(漢方茶)
涼茶は嶺南(中国南部)で飲まれる漢方から作られたお茶で、風邪を予防するための知恵である。100年以上の歴史があり、涼茶店は大衆の楽しみの場でもある。現在でも民俗知恵と伝統文化を継承し日常生活の一部として親しまれている。

【伝統工芸技術】
19. 古琴藝術(古琴の製作技法)
7本の弦を持つ伝統楽器の古琴の製作技法は於浙派の名人である徐文鏡から1950年代に楽器店「蔡福記」を営む蔡昌壽に受け継がれ、1990年代に蔡昌壽が地元の琴奏者に継承するため製作技法を教える教室を始めた。

20. 港式奶茶製作技藝(香港式ミルクティーの作り方)
香港式ミルクティーは通称「ストッキングミルクティー」として知られ、数種の茶葉をブレンドし、大きなポットで抽出し、木綿のろ過袋でこして作られる独特な作り方。英国ミルクティーから100年以上かけて徐々に進化し、香港における東洋と西洋の食文化のフュージョンと発展を象徴している。

21. 紮作技藝(紙の奉納品の製作技法)
竹篾(細長い竹片)、紗紙、色紙、絹布などの材料から様々な奉納品が作られており、伝統的な祝祭や宗教儀式において重要な役割を果たしている。花炮(はなお)、大士王(観音菩薩の化身)、花燈(ランタン)、龍、獅、麒麟や紙の供え物などが作られ、この製造技術は重要な社会的、文化的価値を持っている。

22. 香港中式長衫和裙褂製作技藝(チャイナドレスの製作技法)
チャイナドレス「長衫」と「裙褂」の製作技術。男性用の長衫は新界で長老のステータスシンボルとして社会的に重要であり、女性用の長衫の縫製技術は東洋と西洋の両方の衣服デザインの影響を受け独自のスタイルを発展させた。裙褂は花嫁が結婚式で着る伝統的な衣装で、柄は主に龍と鳳凰で伝統的に手作りされている。

23. 戲棚搭建技藝(劇場建築技術)
神様の誕生日、太平清醮や盂蘭勝會の期間、神様への儀式として劇「神功戲」を上演するため、竹と杉で骨組みを作って仮設の建物を建てる。100人を収容できる小さなものから、数千人を収容できる大きなものまで、必要に応じて柔軟にサイズ変更できる。

24. 廣彩製作技藝(広彩の製作技法)
広彩とは広州彩色磁器の略称で、ファミーユ・ローズとも呼ばれる中国陶器。製作技法は清朝初期にまで遡り、1920年代に広州から香港に広がった。伝統的な手描きの技術と縁起の良い模様のスタイルを維持しつつも印刷や転写の技術も使用され、香港の地元の絵画技術と特徴的な模様が追加され、中国と西洋のスタイルを組み合わせた香港製の広彩スタイルが生まれた。

なお、「口承による伝統および表現」の分野には代表リストに選ばれた項目はありません。

無形文化遺産代表リスト(無形文化遺産オフィスホームページ)
https://www.icho.hk/en/web/icho/the_representative_list_of_hkich.html