明日は香港の祝日・重陽節、歴史と習慣を解説

更新日:2025年10月28日
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菊

明日10月29日(水)は、香港の祝日「重陽節(チョンヨンフェスティバル)」です。この日は旧暦の9月9日にあたり、中国では古くから奇数を縁起の良い「陽」、偶数を縁起の悪い「陰」とする考え方があり、最大の一桁の奇数「9」が重なることから「重陽」と呼ばれるようになりました。縁起の良い日とされており、香港ではこの日に先祖の墓参りや掃除を行うほか、家族でハイキングなどを楽しむ人も多く見られます。

重陽節の起源は古く、少なくとも東漢時代(西暦25〜220年頃)にはその記録が見られ、さらに遡って戦国時代の習俗に由来するといわれています。伝説では、桓景(Huan Jing)という人物が、占い師の助言を受けて旧暦9月9日に山へ逃れ、村を襲った大災から家族を救ったとされ、これが山に登る習慣の原型になったという説があります。

重陽節は「陽が極まる日」とされ、そこから登高や菊、厄除けの習俗が生まれたといわれています。登高は、山や丘、高台に登ることで「高い所に昇る=陽を極めた日を良い方向へ導く」という意味合いがあり、家族でハイキングを楽しんだり、山頂へ出かけたりします。香港では山や丘に墓地が多いため、山登りと墓参りが同時に行われることも少なくありません。先祖の墓参りでは、墓石の清掃や線香、食べ物・果物・紙銭などの供え物の奉納が行われます。

さらに、重陽節には菊の花を愛でる習慣や、菊花酒(菊の酒)、重陽糕(重陽餅・米粉製のお菓子)を食べる習慣も伝わっています。菊は長寿や厄除けの象徴として用いられます。加えて、風箏(凧上げ)や茱萸(しゅゆ)を身につける習慣もあり、凧を上げることで「悪いものを空に飛ばす・払う」という意味があり、茱萸という植物の実や枝を身につけることで魔除けとする地域もあります。

現代の香港では、伝統を守りつつも多くの人が家族揃ってお墓参りとハイキングを組み合わせて楽しみます。景色の良いハイキングコースや山頂でピクニックをする人も増えており、若い世代や都市部ではハイキングが主目的で、必ずしも供養だけではなく、屋外でのレジャーとして楽しむ傾向があります。

ただし注意点として、重陽節には山や丘のそばでの線香や焚き火、焼香、紙銭の燃焼が原因で山火事が発生することがあります。